ADHDの薬の解説

SAC’s blue ADHDコーチングのきゃのです。ここでは、日本で処方されるADHDの代表的な薬について解説します。

各薬の一般的な話を、きゃのが1当事者として服用した際の感想、ADD Coach Academyでコーチングを習ったときの知見も交えながら解説します。

なお、SAC’s blueのコーチングではクライアント様に対して薬処方は行っておりません。お医者様と相談の上、ご自身の症状に合わせて薬を処方して頂いて下さい。

あくまで、コーチングと並行して、ADHD症状を軽減する方法としてどんな薬があるのか参考にして貰えると幸いです。

目次

ADHDの薬は「脳」に効果を発揮する

人間の脳内の神経細胞はシナプスと呼ばれる結び目を介して、互いに結合して神経回路を形成しています。

シナプス前部の神経細胞から放出される神経伝達物質が、シナプス後部に存在する受容体に結合することで、情報伝達が行われます。

ところがADHDの方の脳内では、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の不足によって、シナプス間の情報伝達がうまく行われず、実行機能の障害や「不注意」「多動」「衝動」といったADHD症状が引き起こされます。

(神経伝達物質のノルアドレナリンはドーパミンから変換されてつくられるため、脳内でドーパミンが不足するとノルアドレナリンも不足する傾向になる)

ADHDの薬はいずれも、脳内のこれらの神経伝達物質の働きを調節することで、ADHDの症状改善に効果が現れるものです。

日本で認可を受けている薬は主に3種類

日本で認可を受けている主な薬は以下の3種類です。

名称ストラテラ(アトモキセチン)コンサータインチュニブ
種類非刺激薬中枢神経刺激薬非刺激薬
画像
効能脳内のノルアドレナリンを増やすことで、ADHDの症状を改善脳内のドーパミンを増やすことで、脳の覚醒度を上げ、ADHDの症状を改善ノルアドレナリンの受容体であるα2A受容体へ作用し、ADHDの症状を改善
有効な場面特に過集中に対して視野を広げたい時その場で集中して脳を覚醒させたい時、不注意を軽減したい時多動・衝動を抑えたい時、イライラや不安を感じるため情動を安定させたい時
効果が現れるまで1~3ヶ月飲んだ直後1~2週間
副作用眠気、吐き気、食欲低下、頭痛など食欲低下、体重減少、不眠症、依存性など眠気、食欲低下、血圧低下
服用頻度1日1,2回 1日に1回1日に1回
すべての薬において効能、副作用などに個人差はあります
※画像引用元: https://www.qlife.jp/

以下に各薬の特徴について解説していきます。

ストラテラ(アトモキセチン)

主要成分はアトモキセチンです。(ジェネリック薬の方がかなり安価であるため、先発医薬品名である「ストラテラ」より「アトモキセチン」という名称の方がよく聞きます。)

ADHDの薬として一番最初に処方されることが多いのはこちらではないでしょうか。

脳の前頭前野の神経末端にあるノルアドレナリントランスポーターを選択的に阻害し、脳内のノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで、ADHDの症状を改善させます。

ストラテラ(アトモキセチン)は、コンサータに比べると効き目がマイルドですが、頭の中が静かになるような感覚があり、「不注意」「衝動」「多動」といったADHDの症状全体に効き目があります。特に過集中に対して視野を広げたい時に有効と言われているようです。

実際、きゃのが服用していたときの個人的な感想としても、効果が効いてくると多動が落ち着いたように感じました。

ただし、効果が出るまでに2,3ヶ月程度かかることから、継続して服用することが必要です。(よくやりがちなのは、忙しくて病院に行けなかったり、泊りがけの際に薬を忘れてしまったり。。)

また、副作用としては、眠気、吐き気、食欲低下、頭痛などがありますが、最も多いのが吐き気のようで、きゃの自身もこれが非常にキツイと感じていました。

コンサータ

主要成分はメチルフェニデートです。

コンサータは脳内のドーパミン・ノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、脳機能を活性化させる薬です。特にドーパミントランスポーターに強く作用するため、脳内のドーパミン濃度を増やし、脳の覚醒度を上げ、ADHD症状を抑えます

実際、きゃのが服用した時の感想としては、頭の中が半強制的に活発になった感じがして、すごく集中できます。(ただ、効果が切れたあとは頭が疲れました。)

コンサータの大きなメリットの1つは、毎日飲み続ける必要はないということです。一度飲んでからすぐに効果を発揮し、効果が12時間程度持続します。そのため、仕事の日だけ服用して、休日は服用しない、といった使い方をしている人が知人にも多いです。

副作用には、食欲低下、体重減少、不眠症などがあります。特に食欲低下がよく報告されているようです。

そして、注意しなければならないのは、コンサータの成分であるメチルフェニデートには薬物乱用・依存リスクが古くからあるとされています

コンサータカード

そういった背景からコンサータの処方にはADHD適正流通管理システムへの登録が必要となります。

登録自体は一回切りなのですが、薬局でコンサータを処方してもらう際に、処方箋とは別にコンサータカードが必要になります。コンサータカードを持って来るのを忘れると薬を処方してもらえないので注意してください。

有名なADHDあるあるですが、コンサータカードは薄っぺらい紙のカードのため非常に紛失しやすいです。自分が絶対になくさない方法で管理することをおススメします。

インチュニブ

主要成分はグアンファシンです。

インチュ二ブは2017年に武田薬品工業から日本で初めて販売が開始された薬です。6歳以上の小児から成人まで処方が可能な薬です。

ストラテラと同様、ノルアドレナリンの濃度を増やすことでADHD症状を改善しますが、こちらはトランスポーターではなく、シナプス後部に存在するα2Aアドレナリン受容体の働きを阻害することで効果を発揮しています。

インチュニブには鎮静作用があり、ADHD症状の中でも衝動・多動の症状を改善させることに加え、情動を安定させる効果も高いようです。

一方で副作用としては、眠気、血圧低下、食欲低下などがありますが、鎮静化作用を持つ薬の特性上、特に眠気の副作用が強く、仕事などへの影響を考慮すると午前中の服用は避けた方がよさそうです。 

自立医療支援制度について

薬を処方してもらう時に忘れてはいけないのは、自立医療支援制度の活用です。

これは精神障害治療(ADHDなどの発達障害治療を含む)で発生する医療費負担において、通常3割(健康保険証適用)となる自己負担分を1割負担に抑えることができる制度です。さらに、世帯の所得などに応じて自己負担上限月額も設定されます。

自立医療支援制度の申請には、医師の診断書、もしくは精神障害者保険福祉手帳の写しが必要となります。そのため、初回の処方時には自立医療支援制度の適用は間に合わないケースが多いと思いますが、2回目以降の処方の際は必ず制度を適用して、高額な医療費を少しでも抑えて下さい。(ほとんどの医師がこの制度を紹介してくれると思いますが、特に紹介が無い場合はご自身で申告してみてください。)

SAC’s blueでのADHDの薬への考え方

ここまで各薬の効能について解説してきましたが、ここからはSAC’s blueのADHDコーチングの中でこれらの薬についてどう考えているかを解説します。

薬はADHDerにとって有効な選択肢の1つ

薬の効能は認められています。それはここまで記事でまとめてきた通りです。

自分の通っていたADHDコーチングスクール(ADDCA)でも、大学教員や学生が薬を服用して、困りごとがかなり軽減された事例も紹介されていました。

きゃの自身も薬の服用によって、ADHD症状の改善効果を感じていました。

そのため、これらの薬を服用することで、クライアント様の困りごとにダイレクトに効果を発揮することもあるため、コーチング中にクライアント様が希望された場合には、薬の服用に必要な情報を提供するようにしています。

薬はフィットしない場合もある

しかし、薬はADHDの困りごとを必ず解決する魔法のようなものではありません

薬の効能を発揮しても困りごとが解決しないケースや、副作用が強くて服用を継続することが困難な場合があります

例えば、退屈な仕事を終わらせるためにコンサータを飲んで脳を覚醒させても、「サボっても何とかなるかも」「どうでもいいや」と心の底で思っていると、覚醒した脳は自分がやりたい別のことに向いてしまいます。

そしてきゃの自身は、ストラテラ・コンサータの服用で改善効果はあったものの、体質なのかいずれの薬も吐き気がキツく、薬を使用できる場面が限定的になっています。(ストラテラは2年間飲み続けましたが副作用がきつく断念。今は体調が良い時にだけコンサータを服用することにしています。)

理想は薬に頼らずに生活すること

SAC’s blue ADHDコーチングでは、「自分のADHD脳の理解」と「それに合った人生戦略の構築」が何より重要と考えているため、願わくば薬に頼らずに自分らしく生きることを理想としています。

ADHD脳が高い注意力を発揮させる仕組みを理解して人生戦略を立てることでADHDの困りごとは減らすことができます。不注意は仕組みや自分の得意なことでカバーすることもできます。

そして私自身、薬の副作用に非常に悩まされてきたため、薬の服用回数を減らしたいと今でも強く思っています。

「薬なんて辞めればいい。それより自己理解が重要」と短絡的に考えている訳ではありません。薬の効能も辛さも私自身が経験して理解した上で、薬無しで自分らしく生きることが望ましいと考えています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

繰り返しになりますが、薬の効果の認められている素晴らしいものですが、あくまで有効なオプションの1つとして捉えていただければ幸いです

ここまで、SAC’s blueのコーチきゃのの個人的な考えも合わせてADHDの薬について解説してきましたが、効能や副作用には個人差があるので、医師の診断を受けて、一度自身で服用を経験してみるのも良いかもしれません。

それでは、ここまで読んで頂き有難うございました。皆様とコーチングでお会いできることを楽しみにしています。

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